「ビンゴ!」

#リプきたセリフでss書く
紅白白玉さん宅ビンゴちゃん

 足先から光を浴びて青へと潜っていく。刻一刻と変わっていく波が光を絶えず屈折させている。水面から吊るされた光の梯子はひどく不安定で頼りなかった。ここに道はないし、誰かが手を取って案内してくれる訳じゃない。無意識に手を握りしめる。船の下まで潜ると海は一層濃くなった。落ちた影が体温を奪っていく。
エラ呼吸を肺にたっぷりと吸い込んできた酸素で補って、それから力強く水を蹴り出す。思考を介さない自然な動作。身体に染み付いた仕草だけが彼女を正しく導いてくれた。不安と焦りは潜るたびに波に流されていくようで、握りしめていた拳は自然とほぐれていった。
水の中はどこよりも自由だったはずだ。息を吸う。ゆっくりと、今度は確かな意志をもって。視界が澄んでいく。微かな音を耳が拾った。くぐもった声、命の瀬戸際に漏れだしたような声。水は音を伝えすぎるから、音の在処を見つけるのは難しいと言われている。それがなんだっていうんだ。ここはどこよりも自由なところ。辺りを見渡す。暗い紺のなかで何かが光った。太ももから足の指先までを大きく使って泳いでいく。近づくごとに浮き上がる人影。

「ビンゴ!」