夕焼けと煙火

 屋上階の一番高いところに腰を下ろす。うめき声が聞こえたが気にしない。これは勝者の特権だ。辺りから血の匂いが立ち上る。いや、自分からか。
 俺の下でくたばっているヤツのポケットを漁る。ひしゃげた煙草の箱からあまり折れていなさそうなものを選んで抜き取った。口にくわえたそれに火をあてて、優しく吸い込む。先端にじんわりと火が灯ったのを確認して一度吐きだす。また煙草を口にして、ゆっくりと息を吸い込んだ。僅かに開けた口の端から少しずつ空気を取り込んで肺まで送る。溜まった煙を夕陽に向かって吹きかけた。
太陽が昇っては沈んでいくのと同じくらい当たり前に、血を流しては再生してまた血を流してきた。いつだって暴力は分かりやすいから勘違いしそうになるけど、勝者になれるのは強いヤツじゃない。もちろん強いに越したことはない。でも勝つヤツってのは最後まで立ち続けたヤツだ。だから俺は倒れない。腕が取れても、はらわたを撃ち抜かれても。痛みなんかで負けてたまるか。
 煙が目にしみて煙草が短くなっていることに気づく。目を擦ってから最後の一息を吐き出す。ゆるく流れていく煙を夕陽がまっすぐ貫いた。ぐぅっと気の抜けた音が腹から鳴る。これだけ暴れたんだ、腹も減るはずだ。早く帰ってうまい飯でも食おう。今日の晩飯はなんだろう。そんなことを考えながら立ち上がり、屋上を後にする。

まろさんのこちらのイラストにssをつけさせていただきました。

貰いタバコ(一応血が出てるからラベル!)

まろ🦄 (@maropi.bsky.social) 2025-02-13T17:22:50.033Z