「ルカ」
「――ルカ・ギュンター、俺の本当の名前」
ハッとして顔を横に向ける。彼があまりにも柔らかい顔で笑うから、私は思わず息を飲む。心臓の音がやけにうるさい。考えるよりも先に瞳に薄い膜ができたと思えば、それはすぐに厚くなり熱をもってこぼれ落ちようとする。
小さく息を吸って強ばった喉をほぐした。それでも乾いた唇は震え、そこを通る音もきっと震えてしまうだろう。だからせめてとびきり優しい笑顔で、こう言ってやる。
「私はルナ、ルナ・ローリング。どうぞよろしく」
手を差し出すと、彼は苦笑いする。
「うん、知ってる」
彼もゆっくりと手を差し出し、私の手を握り返した。
「――ありがとう」
照れくさそうにはにかんだ赤い髪が、夕陽に照らされてひどく綺麗だった。